〒192-0913 東京都八王子市北野台5丁目26番2号
【加入者】
企業型年金を実施する事業所に使用される厚生年金被保険者は、下の2つの例外に該当しなければ加入者となります。
(例外1)規約で一定の資格を設けた場合、資格に該当しない者は加入者となりません。
一定の資格とは次の4つです(組み合わせも可能)。
加入者とならない従業員への代替措置にも留意してください。
①一定の職種・・就業規則等により給与や退職金等の労働条件が他の職種に属する従業員とは別に定められている
職種(例:「研究職」・「営業職」・「事務職」、「管理職を一定の職種とする」、「総合職と一般職の
うち一方のみを加入者とする」、「役員を加入者としない」、「パートタイマーを加入者としない」
など)
②一定の勤続期間・・実施事業所における勤続期間です。会社合併や会社分割など継続していると判断できる場合は
規約に定めることで勤続期間を通算できます。(例:「勤続○年以上は加入者とする」・「勤続〇年 以上を加入者としない」、「勤続○年未満を加入者とする)
③一定の年齢・・「(加入時に)○歳未満の者を加入者とする」⇒○歳は50歳以上でなければなりません。
加入時とは加入者資格取得時や企業型年金制度導入時の年齢で、退職までの年数が少ないため、 加入者とせず、代替措置を設けます。 なお、資格喪失年齢は60歳以上でなければなりません。
④希望する者・・「希望した者のみを加入者とする」⇒後日、「希望しない⇒希望する」に変更はできますが、逆には 変更できません。(例:前払い退職金と企業型年金のいずれかを選択する「選択型確定拠出年金」)
★代替措置・・一定の資格を設ける場合は加入しない者に相当な措置(事業主掛金と概ね同額の確定給付企業年金や
退職手当制度)が必要です。ただし、パートタイマー等で、労働条件が著しく異なる場合(給与規定
や就業規則で不合理でない相違が設けられている場合)は代替措置が不要とされています。
(例外2)企業型の老齢給付金の受給権を有する者(有する者であった者)は加入者となりません。なお、受給資格を
有していても請求を行っていない者は受給権を有する者には該当しないので、加入者となります。
【加入時のポータビリティ】
加入者となった者に、他の企業型年金や個人型年金(iDeCo)の個人別管理資産がある場合は、加入した企業型年金に資産を移換(持ち運び)することができます。
【資格の喪失】
加入者の資格を喪失するのは、次の6つの場合です。
資格喪失・・①死亡 ②退職 ③事業所が企業型年金実施事業所でなくなった ④厚生年金の被保険者でなくなった
⑤企業型年金規約に定める資格を失った ⑥企業型年金の老齢給付金の受給権を得た
【資格を喪失した後の年金資産について】
資格を喪失した場合、企業型年金の個人別管理資産は移換(持ち運び)することができます。喪失日の6か月後の月末までに移換の申出を行わなかった場合は自動移換されます。なお、60歳以上で資格を喪失(上記資格喪失の①③を除く)した場合は企業型年金運用指図者になることができます。
★事業主への資産の返還・・使用された期間が3年未満で、規約に記載がある場合は、事業主が拠出した掛金を事業主
に返還する場合があります。(逆に言えば、勤続3年以上なら加入者の資産は保全されま
す)
★脱退一時金・・資格を喪失した者が、加入者・運用指図者のいずれにもならず、一時金を受け取ることができるの
は、個人別管理資産の額が少額など、以下の要件をすべて満たした場合のみです。
【脱退一時金】支給を請求できる要件
①確定拠出年金(企業型および個人型)の加入者・運用指図者でない。
②企業型確定拠出年金の加入者の資格を喪失した日の6か月後の月末までに請求する。
③60歳未満 ④個人型確定拠出年金に加入できない(日本国籍の海外居住者を除く) ⑤通算拠出期間が5年以下 ま
たは 個人別管理資産の額が25万円以下 ⑥障害給付金の受給権者でない
(注)個人別管理資産の額が15,000円以下の場合は、③~⑥の要件は不要です。
(注2)②の期限を過ぎても、個人型確定拠出年金に資産を移管した場合(個人型確定拠出年金運用指図者となる)
は、③~⑥の要件を満たせば、最後に企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失後2年未満なら
脱退一時金の支給を請求できます。(新たに企業型年金加入者となった場合を除く)
【企業型年金運用指図者】
運用指図者とは、掛金を拠出せず資産の運用のみを行う者のことです。60歳以上の企業型年金加入者で次の①~④により資格を喪失した者、及び、企業型年金の障害給付金の受給権を得た者は、運用指図者になることができます。
運用指図者となる喪失理由・・①退職 ②厚生年金の被保険者でなくなった ③企業型年金規約に定める資格を失った
④企業型年金の老齢給付金の受給権を得た
【企業型年金を実施する事業所】
事業所に使用される厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合(過半数を代表する者)の同意を得て、企業型年金の規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けた事業所⇒詳しくは「制度の導入と規約」参照
掛金は事業主が拠出します(規約に定めがあれば、従業員も拠出できます)。
拠出された掛金(事業主拠出分・従業員拠出分)は、個人ごとの確定拠出年金専用口座に積立てられます。
【事業主掛金の拠出方法】
企業型確定拠出年金の掛金は、毎月又は年1回以上、事業主が定期的に拠出します。年とは12月から翌年11月までの12か月(「拠出単位期間」といいます)で、これを月単位でいくつかの区分に区切って(「拠出区分期間」といいます)、複数月分まとめて拠出することもできます。
・拠出区分期間の例⇒12月から3月、4月から9月、10月から11月、など等間隔でなくても可。
【掛金の額の算定】
事業主掛金の額は規約で定めることになっていますが、算定方法は以下の3つのいずれか1つでなければなりません。
①定額・・加入者全員が同額でなければなりません。ただし、就業規則等で給与等の労働条件が区分されている場合
は、資格ごとに額を定めることは可能。
②定率・・「給与」に「一定の率」を乗じて算定する方法です。「率」は加入者全員が同じでなければなりません。
「給与」は以下のア~エを給与とみなすことができます。退職金規程等に基づく従業員区分により、異なるものを
用いることもできます。
ア・・給与規定の給与⇒基本給。基準内給与とみなされる手当(役職手当、技能手当等)、賞与(支給月の掛金と
して)、賞与(12分の1ずつを各月の掛金として)を含めることもできます。
イ・・退職金規程の給与、企業型年金のための給与
ウ・・ポイント制のポイント⇒給与規程や退職金規程のポイント。昇格の規定が明確、同一加入期間で格差が過大
でない、数理計算が可能、の要件を満たす必要があります。0ポイントで0円となることは不可。業績ポイン
トは可。
エ・・厚生年金保険の標準報酬月額
③定額と定率の合算(①+②)
【拠出限度額(月額)】
他制度加入者は「55,000円-他制度掛金相当額」、他制度加入者以外は「55,000円」です。
(他制度加入者・・確定給付企業年金、私立学校教職員共済制度、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、の加入者)
(個人型年金iDeCoに同時加入している方の、iDeCoの拠出限度額は20,000円ですが、他制度掛金相当額+企業型確定
拠出年金事業主掛金額が35,000円を超えるとiDeCoの拠出限度額が逓減します。)
【年の途中で加入者資格を取得・喪失した場合の掛金】
資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月まで、の月数に応じた額を拠出する。
【拠出の中断】
休職等で給与が支給されておらず、合理的な理由があり、労使合意の上規約に明確に規定されていれば中断も可能。
【加入者掛金拠出(マッチング拠出)】
企業型年金は事業主が掛金を拠出しますが、規約で定めた場合、加入者も掛金を拠出することができます。
・掛金の額のルールは以下のとおり
①定額のみ(定率は不可)
②選択肢は0円以外に2種類以上必要。職種等により、異なる選択肢を設けることは可能。
③加入者掛金の額は、事業主掛金の額を超えないこと。また、加入者掛金・事業主掛金の合計額が拠出限度額を
超えないこと。
④拠出の開始・停止、額の決定・変更は、加入者の意思により決定できること。(事業主の制約は不可)
⑤前納・追納はできない
⑥額の変更は拠出単位期間(12月から翌年11月)に1回できます。ただし、以下の場合は回数にカウントしません。
ア・・事業主掛金の額の引き下げに伴い、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えないようにするための変更
イ・・事業主掛金の額の引き上げに伴い、加入者掛金の額との合計が拠出限度額を超えないようにするための変更
ウ・・加入者掛金の額の選択肢の変更に伴い、額を変更せざるを得なくなった場合
エ・・0円に変更(停止)
オ・・0円から変更(再開)
カ・・加入者資格を喪失する際、月数に応じた額に変更する場合
(注)規約に「ア~ウの取り扱い」、「給与から控除できない場合のエの取り扱い」を定めた場合は、加入者の変更
指図なしに事業主が加入者掛金の額を変更することができます。(速やかに加入者に報告することは必要)
・掛金の額をいくらにするか・・原則60歳まで引き出せないことを考えて決めます。逆に、60歳時点での目標額から
逆算してみる方法もあります。
・所得控除・・加入者が拠出した掛金は、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)され、税金がかかりません。
【選択制確定拠出年金】
給与や賞与などの一部を「ライフプラン手当」等の名称で切り離し、「従来通り給与や賞与として受け取る(前払い退職金として受け取る)」か「企業型確定拠出年金へ拠出する」か、社員が選択する制度です。ライフプラン手当の一部を受け取り、一部を確定拠出年金に拠出することもできます。(金額を社員が選択できます。)
・企業型確定拠出年金に拠出する分は、税金(所得税・住民税)や社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)の計算の対象とならないため税金や社会保険料が節約できますが、社会保険の給付(厚生年金・傷病手当金・育児休業給付金・基本手当等)を受ける際の金額も下がります。
・どちらを選択しても、残業代や賞与の計算に差が出ないように制度設計を行います。
・確定拠出年金への拠出を「希望しない」から「希望する」への変更はできますが、「希望する」から「希望しない」への変更はできません。ただし、拠出する金額の変更は規約の範囲内で可能です。
確定拠出年金では、加入者が個人別管理資産を運用します。具体的には、運営管理機関が選定・提示した運用の方法(運用商品)の中から選択(運用の指図)することで、資産を運用します。運用結果に応じて、将来の給付額が変わってきます。
【運用の方法(運用商品)】
・運用の方法の数・・3以上35以下と法律で定められています。
・運用商品の収益の性質・・リスクやリターンの性質が異なる運用の方法の中から3つ以上選定することになって
います。(定期預金・保険商品などの元本確保型商品や、債券投資信託、株式投資信託、バランス型投資信託などの
元本確保型以外の商品など、リスク・リターンの異なる運用方法を20~30程度選定することが多い)
【運用の方法(運用商品)の情報提供】
運営管理機関は、運用の方法を提示する際に、利益の見込みや損失の可能性など加入者等が運用の指図を行うために必要な情報を提供することが義務付けられています。その内容は以下のとおりです。
・利益の見込み、損失の可能性
・拠出の単位・上限額
・利子、配当、その他利益の分配方法
・その運用方法の過去10年間(10年未満ならその期間)の利益・損失の実績
・その運用方法に係る、個人別管理資産額の持ち分の計算方法
・手数料その他の費用の内容
・(預金の場合)「預金保険制度」の対象か
・(保険商品の場合)「保険契約保護機構」の対象か
・「金融サービスの提供に関する法律」第4条第1項に規定する重要事項
【運用の指図】
加入者等は、自分の個人別管理資産について運用の指図を行います。具体的には、運営管理機関が提示した運用の方法(運用商品)から一つ又は複数を選択し、それぞれの配分割合とともに、記録関連運営管理機関に示します。記録関連運営管理機関はこれを資産管理機関に通知し、資産管理機関が運用します。
・運用の指図は、少なくとも3か月に1回行うことができます。(規約によります)
・記録関連運営管理機関は少なくとも年1回、加入者等に書面で、個人別管理資産額・運用の方法(契約)ごとの
金額(持ち分の額)・掛金の拠出額などを通知します。(確認したいときには随時、記録関連運営管理機関の
コールセンターやホームページで確認できるようになっているのが一般的ですが、年1回は書面で通知します。)
【指定運用方法】
「指定運用方法」とは、加入者が運用指図を行わない場合に、自動的に適用される運用方法のことです。いわゆる
デフォルトファンドです。個人別管理資産の運用の指図のない状態を回避する方法として、加入者から運用の指図が
行われるまでの間において運用を行うものです。
・指定運用方法の提示⇒規約に定めることにより、提示された運用の方法の一つを、指定運用方法として加入者に
提示することができます。(指定運用方法は、実施事業所ごとに選定・提示することができます)
・指定運用方法の選定⇒運営管理機関は、基準(施行規則第19条)に該当するものを選定しなければなりません。
また、労使協議に必要な説明や情報提供を行い労使協議の結果を尊重して決定する必要があります。
・指定運用方法の適用⇒①加入者になってから最初の掛金が納付されてから、規約で定める特定期間(3か月以上)
を経過しても運用指図が行われない場合に②運営管理機関は加入者に運用指図を促す通知を行うが③それでも
規約で定める猶予期間(特定期間経過から2週間以上)が経過しても運用の指図が行われない場合、未指図個人別
管理資産に指定運用方法が適用されます。(加入者が指定運用方法に運用指図を行ったとみなします)
・指定運用方法適用後の情報提供⇒運営管理機関は加入者に対し、自らの運用の方法を選択して運用を行うよう
促した上で、指定運用方法について説明を行う。
・対象者⇒指定運用方法が適用されるのは加入者のみで、運用指図者には行いません。
【運用の方法の除外】
運用商品をラインナップから外すことです。
・労使協議⇒運用の除外を行おうとする場合は、労使で協議・検討した結果を踏まえてどの運用の方法を除外するか
決定することとされています。(法令解釈通知)
・同意が必要⇒運用の方法を除外しようとするときは、除外しようとしている運用の方法を選択して運用の指図を
行っている加入者・運用指図者(所在が明らかでないものを除く)の3分の2以上の同意を得なければなりません。
なお、同意を得るための通知を行った日から規約で定める期間(3週間以上)を経過しても同意・不同意の意思
表示を受けなかった場合は、同意したとみなすことができます。
・同意の例外⇒運用の方法の契約の相手方が欠けた場合などは同意なしで除外することができます。
・除外の時期⇒上記の同意ができた日に除外します。
・除外決定の通知⇒運用の方法を除外したときは、その運用の方法で運用指図を行っている者に通知しなければ
なりません。所在が明らかでない者には、官報への掲載・インターネットの利用などで公告が必要です。通知時
には、他の運用方法に運用指図を変更するよう促します。
・運用指図が変更されなかったとき⇒除外時までに運用指図の変更が行われなかった場合、指定運用方法が提示
されていれば、規約で定める期間経過後、指定運用方法による運用が行われます。
ポータビリティとは、資産の移換(資産の持ち運び)ができるということです。以下の3つに分けて説明します。
1転職・退職時の企業型確定拠出年金からの移換
2転職・就職時の企業型確定拠出年金への移換
3(企業型確定拠出年金)制度導入時や企業合併時の移換
1.転職・退職時の企業型確定拠出年金からの移換
①転職先の企業型確定拠出年金への移換・・転職先の企業型年金の加入者となった場合は、転職先の企業型年金の
記録関連運営管理機関に申し出ることで、個人別管理資産を移管することができます。
②個人型確定拠出年金(iDeCo)への移換・・個人型年金の加入者・運用指図者である(または、加入者・運用
指図者になることを申し出た)場合は、国民年金基金連合会に申し出ることで、個人別管理資産を移管することが
できます。転職先の企業型年金の加入者となった場合にも、個人型年金に移管することができます。
③確定給付企業年金(BC)への移換・・転職先の確定給付企業年金の規約に「移換を受けることができる」ことが
定められている場合に限り、転職前の企業型年金の資産管理機関に申し出ることで、個人別管理資産を移管する
ことができます。
④企業年金連合会への移換・・企業年金連合会の規約に「移換を受けることができる」ことが定められている場合に
限り、転職前の企業型年金の資産管理機関に申し出ることで、個人別管理資産を移管することができます。
★自動移換・・企業型年金の加入者資格の喪失日の翌月から6か月以内に個人別管理資産の移換を申し出なかった
ときは、企業型年金の加入者になっている場合はその企業型年金、個人型年金の加入者・運用指図者になっている
場合は個人型年金、いずれにも該当しない場合は国民年金基金連合会(移換された者を「連合会移換者」と
いいます)に自動移換されます。
連合会移換者は、運用指図ができず、手数料がかかるので、資産がだんだん減ってしまいます。また、通算加入者
等期間にも該当しませんので、受取年齢が遅くなる可能性があります。受取時の手続きにも時間がかかります。
移管先の目途が立たない場合は、できるだけ早くiDeCoに加入し、移管することが望ましいです。
★移換時の運用・・移管する場合、運用商品は一度現金化されます。確定拠出年金(企業型・個人型)に移換した
場合は、移管後に運用を行います。
★事業主返還・・規約により、勤続3年未満で退職した場合は、会社が拠出した掛金相当額を返還しなければならない
場合があります。
2.転職・就職時の企業型確定拠出年金への移換
①転職前の企業型確定拠出年金からの移換・・転職先の企業型年金の加入者となった場合は、転職先の企業型年金の 記録関連運営管理機関に申し出ることで、個人別管理資産を移管することができます。
②個人型確定拠出年金(iDeCo)からの移換・・個人型年金の個人別管理資産がある場合は、転職先の企業型年金の 記録関連運営管理機関に申し出ることで、個人別管理資産を移管することができます。(移換しない選択も可能)
③確定給付企業年金(BC)からの移換・・確定給付企業年金の脱退一時金相当額を転職先の企業型確定拠出年金に
移管することができます。(個人型確定拠出年金に移管することもできます)
④企業年金連合会からの移換・・企業年金連合会の規約に定める積立金を転職先の企業型確定拠出年金に移管する
ことができます。(個人型確定拠出年金に移管することもできます)
⑤厚生年金基金からの移換・・厚生年金基金の脱退一時金相当額を転職先の企業型確定拠出年金に移管することが
できます。(個人型確定拠出年金に移管することもできます)
3.(企業型確定拠出年金)制度導入時や企業合併時の移換
①確定給付企業年金からの移換・・確定給付企業年金の積立金の一部を移換 または 確定給付企業年金を終了した
場合の残余財産の移換。どちらも移換は一括で行います。減額または終了の手続きと労使合意が必要です。
②厚生年金基金からの移換・・単独型・連合型基金は、上の①確定給付企業年金からの移換と同じです。
総合型基金は全部移換のみ(一部移管は不可)で、一度企業年金連合会に移換してから企業型確定拠出年金に移換
します。注意点は、全従業員に強制はできないこと、受給権がある人は基金に留置すること、制度の連続性は保た
れることです。
③中小企業退職金共済からの移換・・中小企業でなくなったため退職金共済契約が解除された場合の解約手当金
相当額の移換 または 企業合併に伴い退職金共済契約が解除された場合の解約手当金相当額の移換。どちらも移換
は一括で行います。掛金を減額して移換します。(全額だと解約扱いとなり、分配されてしまいます。)
なお、合併等の場合は、企業型確定拠出年金から中小企業退職金共済への移換もできます。
④退職一時金からの移換・・退職一時金制度の改正(減額)または廃止に伴う自己都合退職要支給額の移管。
移換は退職一時金の規程の改正・廃止が行われた年度から4~8年度にわたり均等に行われます。
確定拠出年金の給付には、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金の3種類があります。
【老齢給付金】
「企業型年金の加入者資格を喪失していること」、「通算加入者等期間(※1)が10年以上(※2)」の2つの要件をみたしていれば、60歳以降の好きな時期(75歳まで(※3))に、老齢給付金を請求できます。
※1:通算加入者等期間⇒60歳の前日の月までの、加入者期間(企業型・個人型)と運用指図者期間(企業型・
個人型)を合算した期間です。確定給付企業年金や中小企業退職金共済等から資産を移管した場合の移換の
対象となった期間も合算できます。なお、期間が重複している月は、ひとつのみでカウントします。
※2:10年以上⇒通算加入者期間が8年以上10年未満なら61歳以降に請求できます。6年以上なら62歳、4年以上なら
63歳、2年以上なら64歳、2年未満は65歳以降です。60歳時点で通算加入者期間がない場合は企業型年金加入者
となった日から5年を経過していれば要件を満たします。
※3:「75歳」は昭和27年4月2日以降の生まれの場合で、それより前の生まれの場合は「70歳」です。
75歳(70歳)に達しても請求しなかった場合は、強制的に裁定され、一時金での受け取りとなります。
★請求先⇒記録関連運営管理機関に請求します。
記録関連運営管理機関が裁定を行い、裁定に基づき資産管理機関から支給されます。
★受給の方法⇒規約の定めに従い、年金(下記ア)または一時金(下記イ)で受け取ります。
年金・一時金の併用もできます。
ア.年金で受け取る場合
・額の算定は、受給権者が請求時に決定した方法によります
・給付の額は、個人別管理資産額(請求日の前月末時点)の20分の1以上2分の1以下になるように定めます。
(終身年金を除く)
・支給予定期間は、5年以上20年以下とします(運用商品に終身年金があり、それを選択した場合を除く)
・支給開始月は規約で定める月(請求月から3か月以内)となります
・支給予定期間の最後の月の月末に個人別管理資産が残っている場合は、翌月以後に支給されます
・支給予定期間の途中で個人別管理資産がなくなった場合は失権します
・支給予定期間にわたって支給を受けることが困難になった場合は、算定方法の変更を申し出ることができます。
(規約に定めがある場合に限ります。資産額が過少になったような場合です。変更は1回限りです。)
・支給開始月から5年経過後は、残りの個人別管理資産を一時金で受け取ることができます。
(規約に定めがある場合に限ります)
・終身年金は、運用商品に該当する商品があり、それを選択した場合です。
イ.一時金で受け取る場合(規約の定めが必要ですが、一般的には規約に規定されています)
・全部を一時金で受け取る場合
一時金の額は、規約で定める日(請求日から3か月以内)における個人別管理資産の額です。
・一部を一時金で受け取る場合
1回に限ります。一時金の額は、受給権者が算定した額です。
★税金⇒年金での受け取りは雑所得(公的年金等控除の対象)、一時金は退職所得(退職所得控除の対象)です。
★受給中に死亡⇒遺族に死亡一時金が支給されます。
【障害給付金】
企業型年金の加入者(又は加入者であった者)が、傷病により、障害認定日(下記)から75歳の前日までに以下の障害の状態に該当した場合は、障害給付金の請求ができます。
原則60歳未満では受給できない確定拠出年金ですが、障害給付金は該当すれば60歳未満でも受給できます。
障害認定日・・初診日から1年6か月を経過した日です。その前に症状が固定した場合は、症状が固定した日です。
障害に該当したとの判断は、初診から1年6か月を経過した日(症状が固定した日)以降に行います。
★受給できる障害の状態⇒①障害基礎年金受給 ②身体障害者手帳(1級~3級)③療育手帳(重度) ④精神障害者保健
福祉手帳(1級~2級)
★初診日⇒初診日が、企業型年金加入前や資格喪失後でも請求できます。
★老齢給付金受給者⇒老齢給付金受給中でも請求できます。
★請求先⇒記録関連運営管理機関に請求します。
★受給の方法⇒年金または一時金で受け取ります。年金・一時金の併用もできます。詳しくは、齢給付金と同様です
が、以下の2点が異なります。
・算定の方法の変更:1回限りではなく、一定の期間(5年以上)ごとに変更できます。
資産額が過少となった場合には変更できます。(いずれも規約によります)
・支給予定期間:5年以上、20年に受給権取得の翌月から60歳到達月までの期間を加算した期間以下
★受給中に死亡⇒遺族に死亡一時金が支給されます。
★税金⇒非課税です。
【死亡一時金】
企業型年金の加入者又は加入者であった者が死亡したときに個人別管理資産がある場合は、その者の遺族に死亡一時金が支給されます。額は、規約で定める日(請求日から3か月以内)における個人別管理資産の額です。
★遺族の範囲と順位⇒以下のとおり
①配偶者(事実婚を含む)
②死亡時に、死亡者の収入で生計を維持していた子、父母、孫、祖父母、兄弟(父母は、養父母、実父母の順)
③死亡時に、死亡者の収入で生計を維持していたその他の親族
④生計を維持していなかった子、父母、孫、祖父母、兄弟(父母は、養父母、実父母の順)
※ 同順位者が2人以上いる場合⇒その人数によって等分
※ 死亡一時金を受けることができる遺族がないとき、死亡後5年間請求がないとき⇒死亡者の相続財産とみなす。
★死亡一時金を受け取る者の事前指定
死亡した者が、死亡前に、死亡一時金を受け取る者を記録関連運営管理機関に指定していたときは、上記の順位に
かかわらず、指定していた者に死亡一時金を支給する。
指定できる遺族の範囲⇒配偶者(事実婚を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹。生計維持がなくてもよい。
★請求先⇒記録関連運営管理機関に請求します。
★税金⇒相続税の対象(みなし相続財産)
【脱退一時金】
【制度の導入】
企業型年金を実施しようとするときは、
・厚生年金適用事業所に使用される被保険者(企業型年金の老齢給付金の受給権を得たことがある者を除く)の過半数
で組織する労働組合(ないときは、被保険者の過半数を代表する者)の同意を得る⇒実施事業所が複数ある場合は
事業所ごとの同意が必要
・企業型年金に係る規約を作成し、厚生労働大臣の承認を受けることが必要です。
※そのためには、事前にどのような制度を導入するか検討し、制度設計を行う必要があります。
※ 他制度で積み立てた資産を確定拠出年金に引き継ぐ場合には、積立不足の解消が必要です。
(他制度=確定給付企業年金・厚生年金基金・退職一時金)
【規約】
企業型年金規約に記載する事項は、実施する内容に関する全てのことで、以下のとおりです。
・必ず記載するもの
①事業主の名称等 ②実施事業所の名称等 ③運営管理機関の名称等・契約(委託の場合) ④資産管理機関の
名称等・契約 ⑤加入者になることの一定の資格(設ける場合) ⑥事業主掛金の額の算定方法・拠出・納付
⑦加入者の掛金拠出(できる場合は額の決定や拠出・納付、できない場合はその旨) ⑧運用方法の提示・運用の
指図 ⑨指定運用方法の提示(提示を行う場合) ⑩運用の方法の除外(行う場合) ⑪給付の額・支給方法
⑫事業主返還の額の算定方法(勤続3年未満で資格喪失時に返還をする場合) ⑬事務費の負担 ⑭投資教育
⑮他制度からの資産の移換 ⑯脱退一時金相当額の移換(確定給付企業年金等から) ⑰他制度への資産の移換
⑱事業年度
・行う場合に記載するもの⇒事業主が運営管理業務を行う場合、その業務
【規約のパターン】
以下の3つがあります。(①~③)
現在は③総合型が増えています。単独で規約を作るよりも手続きが簡単で時間・コストが節約できる上、加入者や掛金などの項目は会社ごとに定めることができるので、使い勝手が良いです。留意点としては、運用管理機関が決まってしまうため、運用商品のラインアップの確認は必要です。
①単独型・・一つの事業主が一つの規約を作る
②連合型・・グループ会社が一つの規約で運営する
③総合型・・代表企業の規約と同じ規約で運営する(掛金その他については、代表企業とは別に独自に制定可)
制度の導入後は、掛金の振込、入社・退社や変更の手続き、運営管理機関や資産管理機関への手数料の支払いなどが必要です。
そのほかに、①継続的な投資教育の実施 ②運営管理機関の評価 ③運用商品のモニタリングが努力義務とされ、④企業型確定拠出年金に係る業務報告・運営状況報告が必要です。
【①継続的な投資教育の実施】
事業主の責務として、加入者に対して継続的に、資産の運用に関する知識を向上させる情報の提供(投資教育)を実施するよう努めることが定められています。確定拠出年金は、加入者が自己責任により運用し、運用結果によって給付額が決定される制度のため、事業主は、加入時はもちろん、加入後も、継続的に必要かつ適切な投資教育を行わなければなりません。委託により行うことも可能ですが、事業主は実施状況等を把握するよう努めなければなりません。
・目的
加入時⇒確定拠出年金における運用の意味を理解し、資産の配分が自らできるようになること、運用による収益状況
の把握ができること。
加入後(継続的)⇒基本的事項の再教育、制度への関心の喚起、実際に資産の運用を経験しているのでより実践的・
効果的な知識の習得。
・内容
1.確定拠出年金制度の概要⇒わが国の年金制度、確定拠出年金の加入者・拠出・運用・給付・資産の移換など
2.金融商品の仕組みと特徴⇒預貯金・信託商品・投資信託・債券・株式・保険商品等それぞれの特徴・種類・
リターン・リスク・価格に影響を与える要因など
3.資産の運用の基礎知識⇒留意する点・リスクの種類と内容・リスクとリターンの関係・長期運用・分散投資など
4.老後の生活設計⇒資産形成・長い老後・公的年金・計画や目標・資産の配分例など
・方法
資料やビデオの配布・説明会の開催等、加入者の知識や経験に応じ、最適な方法で。
社内報・インターネットの情報提供・社内研修の一環とするなど、継続的な情報提供を。
加入者からの質問や照会に速やかに対応すること。
・その他
事業主は、投資教育後にアンケートを行うなど、効果を把握することが求められています。
【②運営管理機関の評価】
事業主は、運営管理業務を委託した場合、少なくとも5年ごとに、運営管理機関(再委託先を含む)の運営管理業務の実施について評価を行い、検討を加え、必要に応じ運営管理機関の変更その他の措置を講じなければならないという努力義務が規定されています。
・目的
事業主は、加入者等の利益のみを考え、運営管理機関を選定することが必要である。当初、運営管理機関の体制や
運用の方法が望ましいものであったとしても、時間の経過とともにそうでなくなる場合もあるので、定期的に点検・
確認し、改善していくことを目的としています。
・評価項目
企業の規模や加入者の構成その他により、評価項目は異なってくるが、少なくとも下記(ア,イ,ウ)の事項について
報告を受け、評価を行い、その結果を加入者等に開示することが望ましい。なお、運営管理機関から業務の状況等に
ついて、年1回以上定期的に受ける報告内容も考慮して評価を行う。
ア.運用の方法(運用商品)⇒以下に該当する場合、加入者等の利益のみを考慮して適切に行われているといえるか
・運用商品の多くが1金融グループに商品提供機関又は運用会社のものである場合
・同種(同一投資対象や同一投資手法)の他の商品と比較し、明らかに運用成績が劣る投資信託である場合
・他の金融機関が提供する元本確保型商品と比べ、利回りや安全性が明らかに低い元本確保型商品である場合
・同種(同一投資対象や同一投資手法)の他の商品と比較し、手数料や解約時の条件が良くない商品である場合
・商品の手数料の一覧について、詳細が開示されていない場合、開示の内容が分かりにくくなっている場合
・事業主からの商品追加や除外の依頼を拒否する場合
イ.運用の方法のモニタリング⇒運営管理機関による運用の方法のモニタリングの内容(商品や運用会社の評価基準 を含む)、またその報告があったか
ウ.加入者等への情報提供⇒わかりやすく行われているか(例えば、コールセンターや加入者ウェブの運営状況)
※.その他に、確定拠出年金を長期的・安定的に運営するための事項(運営体制や運営管理機関の信用・財産の
状況等)、運営管理機関から提供を受けているサービス(例えば、投資教育を委託している場合、その内容や
方法等)も評価することが考えられる。
【③運用商品のモニタリング】
運用商品の選定に当たっては、加入者等が真に必要なものに限って選定されるよう、運営管理機関と労使が十分に協議を行って選定しますが、選定後も「定期的に見直していく」ことが必要です。指定運用方法についても同様です。
・留意点
ア.運用商品の全体のラインナップが加入者等の高齢期の所得確保の視点から見て、バランスのとれたものである
こと
イ.加入者等の効果的な運用に資するよう、個々の運用商品の質(手数料を含む)を十分に吟味し、見直しを行う
こと。その結果及び理由を加入者等に説明すること。
【④企業型確定拠出年金に係る業務報告・運営状況報告】
・業務報告
事業主は、毎事業年度終了後3か月以内に、企業型年金業務についての報告書を、記録関連運営管理機関を通じて
厚生労働大臣に提出しなければなりません。報告内容は9つの事項(記録関連運営管理機関が把握している)です。 報告事項⇒①企業型年金規約に係る承認番号 ②厚生年金適用事業所の名称 ③事業年度 ④加入者等の状況 ⑤事業主 掛金及び加入者掛金の状況 ⑥返還資産額の状況 ⑦個人別管理資産の状況 ⑧指定運用方法の状況 ⑨加入者の資格を 喪失した者の状況
・運営状況報告
地方厚生局は、年度ごとに運営状況の確認を行う事業所を選定し通知します。選定は、概ね5年で一巡するよう選定
することになっています。選定された事業所の事業主は、回答様式「企業型確定拠出年金実施事業所の運営状況
報告書」を提出します。これは、事業主に課せられた努力義務の履行状況を確認するもので、報告内容は次の4つ
です。
報告内容⇒①継続投資教育(加入後の投資教育) ②運営管理機関の定期的な評価 ③運用商品のモニタリング
④資格喪失者の個人別管理資産の移換に係る説明・勧奨
代表の岩瀬です。
企業型確定拠出年金を説明します!
ここまで、企業型確定拠出年金について詳しく解説してきました。
しかし、ここに書かれていない疑問もあると思います。また、一般的な解説ではなく、会社の実情に合ったアドバイスが欲しいということもあると思います。そのような要望をお寄せください。DC(企業年金総合)プランナー1級の資格を持つ社会保険労務士が、ていねいに説明いたします。
企業型確定拠出年金は、会社にとっても、従業員にとっても、メリットが多く、導入する会社が増え続けています。導入のお手伝いや、導入後の運営のお手伝いを行い、制度が広がっていくことを願っています。
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